人事労務管理と人材マネジメントに関する情報発信

割増賃金が上がる日に備えて



正規と非正規という雇用形態の違いが格差を生んでいるが、大企業と中小企業の間では法律が格差を容認している。現在、大企業では月の時間外労働が60時間を超えると割増賃金の割増率が50%に引き上げられる。一方、中小企業は25%のままだ。中小企業の経営を慮っての措置だが、働く側からすれば不公平になる。

こうしたいびつな状況はいずれ解消される可能性がある。割増賃金が引き上げられる日に備え、割増賃金の計算の基本をまとめてみた。






割増賃金の計算の基本


割増賃金は時間外労働や、休日や深夜(午後10時~午前5時)に行われた労働に対して支払われる。現在、中小企業の時間外労働の割増率は一律25%だが、猶予期間が終われば月の時間外労働の累積が60時間を超えると、その超えた部分から50%になる。例えば月に70時間の時間外労働があると、60時間部分は25%、残り10時間部分が50%になる。休日労働の割増率は35%、深夜労働は25%で、こちらは猶予期間が終わっても変わらない。

割増賃金を計算する際は、月給制であっても時給労働者とみなして、1時間当りの時給に相当する 基礎となる賃金 を求める。月によって月給が変わらない完全月給制の場合は、月給を1年間(労使間の取り決めがなければ暦年)における月平均の所定労働時間で割って求める。日給月給の場合は、1日の賃金を1日の所定労働時間で割る。

月給には基本給に加え、除外することが認められた以外の諸手当も含めて計算する。除外出来るのは家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つに限定されている。

こうして求めた「基礎となる賃金」に割増率を掛けて割増賃金を計算する(割増率は時間外労働・25%(大企業は月60時間超の部分は50%)、休日労働・35%、深夜労働・25%)。例えば、基礎となる賃金が2000円の労働者が1時間の時間外労働をすれば、2000円×25%=500円が割増賃金になる。

割増率は2つが組み合わさって適用されることもある。時間外労働が深夜に及ぶと25%+25%=50%になり、休日労働が深夜に入ると35%+25%=60%になる。休日労働には時間外労働という概念がないため、深夜の時間帯に入らない限り終日35%のままになる。






時間外労働の時間数の求め方


実際に時間外労働の時間数を求めるには、まず1日ごとに法定労働時間である8時間を超えているかどうかを調べ、次に1週間単位(起算日は労使間の取り決めがなければ日曜日)で法定労働時間の40時間を超えているかを調べるという2段階で行う。

1日単位で見て時間外労働が発生し、それをカウントすれば、その時間外労働の時間は1週・40時間超の時間外労働時間数からは除外される。1日と1週間で同じ時間外労働が2回カウントされることはない。

1日単位で見ればすべての日で労働時間が8時間以内であっても、1週間で見ると40時間を超えることがある。例えば、月~金の所定労働が7時間、土曜日が5時間で1週・40時間の会社があったとする。この会社でいずれかの日に1時間の残業があっても、その日は法定労働時間の8時間以内に収まっているため、時間外労働にならない。しかし、1週間で見ると41時間となり、1時間が割増賃金の対象になる。

割増賃金の対象となる労働時間を合計する際は1分単位で合計していく。最終のトータルである合計時間を求める際に限って30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げるという計算は認められている。

次回は間違えやすい割増賃金の計算の落とし穴についての予定です。


2015/1/9


【関連記事】休日出勤が残業になる法律の不思議






事務所新聞のヘッドラインへ
オフィス ジャスト アイのトップページへ


↑ PAGE TOP