2016年・目次
能力給と職務給の違いが働き方を左右する
改正後の育児介護休業法の全体像
休日出勤が残業になる法律の不思議
退職金制度に忍び寄る危機
社会保険の適用拡大と人事労務管理への影響
判断が難しい休職期間満了による退職
働き方を大きく変える無期転換ルール
人事評価のフィードバックを伝える際のポイント
法律が求める柔軟性のある働き方
差別の禁止を定める労働法
年功人事から決別する方
管理強化だけでは防げないコンプライアンス違反
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能力給と職務給の違いが働き方を左右する
2016/12/20
最近は各方面で日本企業の人事が限界に来ていることが指摘される。少子高齢化による人件費の高騰や成長産業へ優秀な人材が移動しないこと、多様な人材を活かせないことから生じるイノベーションの不発、やり直し・出直しが不利になる職業人生など、枚挙に暇がない。
また正規・非正規という雇用形態の違いによる処遇の格差も深刻で、政府はこの格差を諸外国並にするためガイドラインの策定と、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の改正を検討している。
こうした日本企業が抱える人事の問題の背後にあるのが、日本と諸外国との賃金に対する考え方の違いだ。日本の会社の賃金の決め方は世界的に見ても珍しく、人を評価することで基本給が決まる。かつては年齢給や勤続給といった属人給が主流であり、現在は職務遂行能力を評価した「能力給」(=職能給)が主役の座を占めている。
一方、欧米を中心とする先進諸国や新興国では、仕事によって基本給が決まるという「職務給」が主流だ。
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改正後の育児介護休業法の全体像
2016/11/27
仕事と家庭の両立を支援するため、平成29年の1月1日から育児介護休業法が改正され、施行される。育児介護休業法は頻繁に改正され、その都度拡充されてきた結果、企業の負担は高まっている。中小企業では該当者から申し出があって初めて規定に目を通し、その負担の重さに驚かされることになりかねない。今回は改正点を踏まえながら育児介護休業法の概要を見ておこう。
育児介護休業法の大枠は、会社を休むことができる規定が2つ、そして労働時間に関する規定が4つある。会社を休むことを認める規定は、①休業と②休暇で、労働時間に関しては、①所定外労働時間の制限、②時間外労働の制限、③深夜労働の制限、④短縮勤務措置の4つがある。
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休日出勤が残業になる法律の不思議
2016/10/29
国会で継続審議中の労働基準法の改正案の中に、中小企業に対する割増賃金の猶予措置を終わらせる項目がある。現在、大企業は労働基準法に定める通り、月の時間外労働が60時間を超えると割増賃金率を50%以上にしなければならないが、中小企業には適用が猶予されている。
しかし、この猶予措置も終わりを迎え、中小企業も長時間の残業代が5割増しになることが視野に入ってきた。時間外労働の割増賃金率が50%以上になると、割増率が2段階になる上、休日労働の割増率35%を超えることになるため、これまでにない事態により、割増賃金の未払いが生じる恐れがある。
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退職金制度に忍び寄る危機
2016/9/28
日銀がマイナス金利を導入したことで、私たちの暮らしへの影響が取り沙汰されている。しかし、退職金への影響が取り上げられることはあまりない。
金利や運用利回りの低下は厚生年金基金のような企業年金の話と思われがちだが、毎月の掛金や拠出金による積立金を運用し退職金を準備する仕組みは、運用利回り低下の影響を受ける。その結果、会社は必要な時期までに必要な金額の退職金が準備できなくなる恐れがある。
退職金制度を巡っては、平成24年3月に税制適格退職年金制度(適年)が廃止となった際、大きな注目を集めた。この時、すでに多くの適年には積立金の不足が生じていたが、退職金制度の見直しをせず、積立金の移行だけを行った会社も多い。こうした会社では退職金の積み立て不足は依然として続いている。
適年からの移行はあくまで退職金の積み立て方法の変更に過ぎず、・・・ 続きはこちら
社会保険の適用拡大と人事労務管理への影響
2016/8/24
人口減少が続く中、多くの女性がより長く働くことが求められているが、それを阻んでいるのが、いわゆる103万円と130万円の壁だ。年収が103万円を超えると所得税がかかり、130万円を超えると社会保険の被扶養者から外れることになる。
そこで政府は、社会保険の機能強化とセーフティネットの充実を目的に社会保険の適用拡大を決めた。これにより社会保険に加入する短時間労働者が増えることになる。当面は「特定適用事業所」と呼ばれる、厚生年金保険の被保険者数が500人以上の会社に限定されるが、規模要件は徐々に縮小することが予想される。将来に備え平成28年10月1日から始まる新しい仕組みを確認し、この改正が企業にもたらす影響についても考えてみよう。
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判断が難しい休職期間満了による退職
2016/7/23
日本の人事労務管理の難しさとして、紛争解決時における低い予測性が指摘されることがある。法律の規定が曖昧だったり、法律で定められていても直ちに合法とは限らないこと多々がある。そのため、一つの判断を巡って労働者と争いとなった場合、結果が予測しづらく、裁判は出たとこ勝負、やってみないとわからないという状況になる。
その典型的な事例として、休職している社員の職場復帰を巡る判断がある。復帰を拒めば復職を求めて訴訟になる恐れがある。逆に復帰を認め症状が悪化すれば、安全配慮義務違反を問われ、損害賠償を請求される心配がある。そんな復職を巡って2つの大学で裁判が相次いだ。
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働き方を大きく変える無期転換ルール
2016/6/24
現在の我が国の働き方の特徴として、雇用の2極化を指摘する声がある。雇用契約に期間に定めがない、いわゆる正社員は雇用は安定しているが、フルタイムで働くことに加え、残業や休日出勤が求められ、会社が命じれば国内外を問わずどこへでも異動しなければならない。これらに違反すると懲戒処分の対象になり、最悪の場合は解雇される。
一方、フルタイム勤務や残業は出来ないとか、転勤が必要な異動や配置転換には応じられないという人は、非正規雇用で働くことになる。自分の生活やライフスタイルに応じた働き方ができる反面、雇用は安定せず、収入も低くなりがちだ。
このように日本で会社員として働くには選択肢が2つしかない。この2極化による問題を解決するのが、「限定正社員」という働き方だ。限定正社員は・・・ 続きはこちら
人事評価のフィードバックを伝える際のポイント
2016/5/24
大企業から中小企業へ転職した人が驚くことの一つが、人事評価のフィードバックが行われていないことだ。大企業では人事評価を行っている会社のうち、およそ8割以上で人事評価のフィードバックが行われている。
人事評価のフィードバックは人材を育成する役割を担っている。フィードバックがないと人事評価は査定の機能しか果たさないことになる。フィードバックを行わないなら、いっそ手間暇のかかる人事評価を廃止して、代わりに3段階程度の簡素な査定評価を行えば十分というケースもある。
人事評価のフィードバックの目的は、社員の能力を正しく見極め、それを引き出し発揮させることで人材の育成を図ると同時に、会社への貢献度を向上させることにある。フィードバックのプロセスでは、上司と部下が成果や課題を共有し、今後の行動目標や育成方針(部下から見れば成長プラン)を立てることを目指す。そして、この作業を通じて信頼関係の構築を図る。
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法律が求める柔軟性のある働き方
2016/4/25
電機メーカー各社が従来型の携帯電話の生産を中止する。日本の携帯電話は独自の仕様で発展を遂げてきたことからガラパゴス諸島の生物になぞらえガラパゴス携帯(ガラケー)と呼ばれてきたが、スマホの普及により淘汰された格好だ。
ガラパゴス化しているのは携帯電話だけではない。日本の人事管理もガラパゴス状態にある。日本企業は新卒学生を大量に採用し、定年までの雇用を保障する見返りに会社の都合に合わせた働き方を強いてきた面がある。それは、多忙な際は長時間労働をさせ、人事異動で勤務地を変更し、配置転換でどんな仕事もさせるという手法であり、世界的に見ても特異な人事管理と言える。
だが、こうしたガラパゴス人事も限界を迎えつつある。人口の減少により、会社の都合に合わせて融通無碍な働き方ができる若手社員の絶対数が減ってきている。そして ・・・ 続きはこちら
差別の禁止を定める労働法
2016/3/19
企業における組織の機能は日米で大きな違いがあるが、人事部もその一つだ。日本では会社規模が大きくなるにつれ、人事部の権限は強くなる。人事部に要注意人物としてマークされると出世は望み薄だ。一方、アメリカでは会社規模が大きくても、人事部門の権限はあまり強くない。採用や評価、異動などの決定はほとんど現場に委ねられており、その判断に人事部が関与することはない。
アメリカ企業の人事部の主な仕事は訴訟の予防だ。元々、差別に敏感なお国柄で訴訟が起きやすいことに加え、集団訴訟に発展しやすい。このため裁判に勝っても負けても、和解しても賠償金や和解金、弁護士費用が巨額になる。そのため人事部の重要な仕事は社内で法令違反が起きないようにすることになる。日本でもアメリカほどではないが、雇用形態や働き方が多様化し、差別が起きやすい環境になりつつある。日本では差別を禁止する労働法が複数に分かれているため、概要を整理してみよう。
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年功人事から決別する方法
2016/2/20
最近の春闘のベースアップでは、若手・子育て世代に手厚く配分し、中高年については伸びを抑制する傾向が見られる。賃金カーブは一定階層以上からはこれまで以上にフラットになり、年功色が薄くなる(以下の図は新しい賃金カーブのイメージ)
実は大企業はこうせざるを得ない事情を抱えている。グローバルでビジネスをすることが日常になり、外国人社員を活用することが当たり前になってきた。彼らの多くは中途採用であり、採用前に仕事内容や期待する役割を決めた上で雇用され、その上で評価される。ここに年齢要素が入り込む余地はない。このため、日本国内で行われているような年齢や勤続年数、過去の功績の累積を加味した評価をしていると、有能な人材を採用したり、定着させることができない。外国人を戦力にするなら、年齢要素を排した人事に移行せざるを得ない。
また国内の社員構成を見ると、・・・ 続きはこちら
管理強化だけでは防げないコンプライアンス違反
2016/1/23
企業の不祥事が明るみになり、経営陣が公の場で謝罪、釈明する光景が珍しくなくなった。こうした場面で必ず取り上げられるのが「ガバナンス」と「コンプライアンス」だ。
「ガバナンス」とは企業を統治する体制のことで、役員の暴走や不正行為、判断ミスを取締役会や社外取締役、各種の委員会、株主総会などがチェックし、事業運営における健全性や透明性を高めることを目的に整備される。「コンプライアンス」は法令遵守と訳され、企業が事業活動に関わる様々な法律に違反しないようにするもので、役員だけでなく管理職や一般社員も関わってくる。
ガバナンスとコンプライアンスはいずれも企業のリスク管理に関わっている。企業が直面するリスクには ・・・ 続きはこちら
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