外国人とスムーズに仕事をする方法
政府は人手不足対策や生産性向上のために、今後より一層、外国人労働者の受け入れを拡充させる方針だ。そのため、私たちの誰もが外国人の上司や同僚、部下と働く機会が増える。また自社に外国人がいなくても、取引先の役員や担当者が外国人ということも起こり得る。
外国人と仕事をすると異なる文化に出会う。そのため時に誤解や対立、摩擦、軋轢、衝突が生じることがある。文化の違いによって生じるビジネスコミュニケーション上の課題を理解する方策を経営者や管理職に教えているのが、フランスのINSEAD(インシアード)というビジネススクールの客員教授、エリン・メイヤー(Erin Meyer)だ。
エリン・メイヤー (YouTube)
文化の違いを可視化する
同氏によれば人の行動や信条には文化的なパターンがあり、それらが「知覚」と「認識」「行動」に影響を与えている。そのため、これらの3つの文化の層を読み解く力をつけることで、上手く対処できるようになる。
具体的にはマネジメントに関する8つの指標を取り上げ、それを基にした カルチャーマップ を作成し、文化の違いを可視化する。8つの指標は、以下の通り。
- ①コミュニケーション
- 文脈に依存したコミュニケーションか否か
- ②評価の伝え方
- マイナスの評価を相手に伝える際は直接的か、間接的か
- ③説得の仕方
- 相手を説得する際は原理優先か、応用優先か
- ④上司と部下との関係
- 組織内の上下関係は平等主義的か階層主義的か
- ⑤決断の方法
- 決断は合意優先か、トップダンウンか
- ⑥信頼関係の構築
- 信頼関係のは軸は仕事中心か、人間関係か
- ⑦見解の相違に対する考え方
- 見解の相違を容認するか、回避するか
- ⑧スケジュール管理
- 時間に対するスタンスは硬直的か、柔軟か
これらの指標と、それぞれの程度の濃淡によりカルチャーマップが出来上がる。日本人と中国人、ドイツ人、フランス人のカルチャー・マップを比較をしてみると、以下のようになる。
日本人はかなり特徴的
日本人は、①文脈に依存したハイコンテクストなコミュニケーションをする。京都の客先で「お茶漬けでも、どうですか」と勧められたら、「そろそろお帰りください」という意味であるといった話は、ハイコンテキストなコミュニケーションの一例と言える。京都の客先という特定のコンテクストによって、話の内容が特別な意味を持つものに変質する。
そして、②ネガティブな評価は相手に間接的にほのめかして伝え、③上下関係は階層主義的で、④説得は応用が優先され、⑤決断は全員の合意が優先される。⑥信頼関係の構築には人間関係がベースになり、⑦対立は回避する傾向が強く、⑧時間管理は厳格で硬直的、といったカルチャーマップになる。
このカルチャーマップを見ると、日本人は8つの指標のいずれも、かなり極端な位置にある。このことから、私たちが出会う外国人で、特にアジア系以外の人はかなり異なる特徴を持つことがわかる。仕事の相手が外国人というケースに遭遇したら、相手のカルチャーマップを調べることで、自分とどのように違うのかが一目でわかる。
また同じ日本人同士でも、8つの指標の度合いには個人差がある。例えば上司がマイナスな人事評価をかなり直接的な表現で伝えてくるとか、部下が文脈に依存しないローコンテクストなコミュニケーションのため、話がくどいと感じてしまうといったことはよくある。
こうした場合に対処するにも8つの指標とカルチャーマップは参考になる。エリン・マイヤーの「異文化理解力」という本には、異なる文化圏の人とどのように対応すればよいかが具体的な事例と共に解説されているので、気になる人は一読されてみてはいかがだろう。
「異文化理解力」
エリン・メイヤー著
2022/08/12
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