効率のよい学びのための6つのステップ
学生時代、あまり勉強しないのに成績優秀という友人がいた方もいるだろう。彼らを見ていると頭の出来が違うとか、生まれつきだと思ってしまう。だが天賦の才を持ち合わせているのは一握りで、大半の人は効率の良い学びを実践していたのかもしれない。
そうした方法を「LEARN BETTER」という本から紹介しよう。学生だけでなく社会人にも役立つし、子供の教育や経営者・管理職が部下を育てる際にも活用できる。
↑
画像クリックでAmazonへ
学習を進める6つのステップ
本書によれば学習とは理解のプロセスであり、メソッド(方法)であり、体系である。一つの事への集中と計画性、内省を伴う活動であり、学習の方法がわかれば習得の度合いと効果は向上する。
学習は以下の6つのステップに従って進めるとよい。
- 学習に価値や意味を見出す
- 目標を定めて知識を管理する
- スキルの習熟度を上げる
- 基本から踏み出して知識を応用する
- 専門分野内の関係性を探す
- 自分が学習したことから学ぶ
各ステップの内容は以下の通り。
①学習に価値や意味を見出す
最初に必要なのはスキルや知識に、自分なりの価値と意味を見出すことだ。人は学びたいと思わなければ学ぶことはできない。そのため習得する知識やスキルに価値を見出す必要がある。スキルと自分との関連性を探る/知識が自分にとって意味のあるものにする方法を見つける/専門知識分野に意味を見出すようにする。
自分にとっての意味を見出すには、専門知識について受け身でなく能動的に理解する。具体的には相手からの問いに答える/他の人に説明する/内容を自分なりに要約して書き出してみる、といったように身体を使って学習する。
②目標を定めて知識を管理する
次に学習を「知識のマネジメント」と捉え、どんなスキルを学びたいのかを見定め、目標を設定し、計画を立てる。
専門知識の習得のために必要な前提知識は何かを見極める。専門知識の体系を知るために、テーマについて知っていることを書き出してみたり、自分に対して小テストをしてみる。自分がわかっている事はどうしたらわかるのか、あやふやな点はどこか、自分の理解度を測る手段は何かを自らに問いかける。
③スキルの習熟度を上げる
何をどう学ぶのかの次は、習熟度を伸ばす。自分が伸ばすべき能力やスキルについて知り、フィードバックを得るようにする。
フィードバックには学習日記や動画による記録で自らを振り返る「モニタリング」と、他人から受けるものがある。フィードバックにより失敗に気づき、修正するために反復練習する。テストなどにより意識的に学んだ内容を思い出す「検索練習」も効果がある。
④基本から踏み出して知識を応用する
次は専門知識を拡大し、意味のある理解を形成することで学習の質を向上させる。そのためには学びながら自分に対し説明を求める質問を投げかける。この概念を説明できるか/このスキルを解説できるか/学んだ知識について自分の言葉で言えるか。
「なぜ」という質問を発することで自分の思考について考えることになり、知識が発展する。なぜ、この著者はこのように主張しているのか/どうしてこの人の話を信じるべきなのか/ここが重要なのはなぜか
学習を発展させるには議論をしたり、人に教えるのも効果がある。議論をすれば論拠が整理されるし、物事のつながりが明らかになり、専門知識が強化される。人に教えることで概念に自分なりの解釈を加え、何が重要なのかが明確になることで専門知識を深められる。
⑤専門分野内の関係性を探す
関係づけのステップでは、個別の事実や手順が別の事実や手順とどのように関わっているのかを理解する。これにより、ある特定の分野の奥に潜む構造への洞察が得られる。専門知識分野内の関係性を検証するには次のような質問を自分に投げかける。
この分野の体系は何か/本質的な因果関係は何か/アナロジー(対比)になりそうなものはないか/この情報を自分にとって価値のあるものに出来ないか/「もし〇〇だったら」という仮説を使って推測をする/コンセプトマップを用いるなど視覚を通じてパターンや体系に気づくようにする。
⑥自分が学習したことから学ぶ
最後の段階では自分の理解について再考する。自分の知識を見直し、自らの理解を振り返り、学習した事から学ぶ。学習には間違いや過信が付き物なためだ。
そのためには次のような自問自答を行い、内省(振り返り)により熟考を促す。
よくわからないと思える所はないか/不明な点はどこか/自分がわかっていることは、どうすればわかるか/振り返りを書き出して記録する/考えを声に出してみる
また自分と異なるバックグラウンドや経験を有する人たちとつき合い、「集中学習」よりも長期間に渡り練習を重ねる「分散学習」に力を入れる。
身体を使って学ぶ
これら6つのステップに共通しているのは、学習は頭を働かせる「活動」であるということだ。机に向かって学ぶだけでなく、身体や五感全体を使った活動を展開する。
そしてフィードバックやベンチマーク(指標)によって学習をマネジメントし、自分を俯瞰して見つめる「メタ認知」により、自分の思考について第三者の視点に立って思いを巡らせてみる。知識全体の中の関係性を見出し、相互関係を掴むようにする。
最近は「学び直し」や「リカレント教育」「リスキリング」といった言葉をよく耳にする。働く限り学びはついて回るが、効率よく学ぶためには学び方を学ぶ必要がある。
2023/08/20
「Learn Better」 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ
アーリック・ボーザー(Ulrich Boser)著
英治出版刊 税別2000円
事務所新聞のヘッドラインへ
オフィス ジャスト アイのトップページへ