アサインメントで人材を育成しよう
役職者や管理職、マネージャーの最も重要な仕事は、部門に課せられた役割や目標を達成することだ。そのためにメンバーたちの能力を活かしつつ、組織・チームを有効に機能させ、人材を育成する。
この時に役立つモデルとしてフレデリック・ハーズバーグの モチベーション・サイクル理論 がある。臨床心理学者のハーズバーグは「動機付け・衛生理論」において、モチベーションを向上させる要因には、①動機付けに直接関わる「内発的な動機づけ要因」と、②外部の衛生環境による「外発的動機づけ要因」に分けられるとした。
外発的動機付け要因には、会社の人事制度や賃金、労働時間・休日、上司との関係などがあり、これが欠けるとモチベーションは低下する。だが、これらを向上させても不満が減るだけで、モチベーションは上がらない。一方、内発的動機づけ要因には、達成感や承認、仕事への責任感などがあり、こちらを向上させると確実にモチベーションは高くなる。
そして、外発的動機づけ要因と内発的動機づけ要因は密接に関係しながら、以下のような一連のサイクルを形成する。これが「モチベーション・サイクル理論」だ。
機会の付与
↓
上司による支援
↓
評価・承認
↓
報酬
↓
新たな機会の付与
機会を与えることが人を育てる
このサイクルの「評価・承認→報酬」という箇所は人事評価制度や賃金制度によってある程度システム化できる。だが機会の付与と上司の支援については仕組みが未整備であり、現場任せ、上司任せになっている。
この機会の付与、つまり部下に適した仕事を与えることは人材育成における最重要課題とされ、アサインメント と称される。部下を持つ立場の人間にとって、人材を育てる際の基本で最も重要なのは、誰にどの仕事をさせるのかを決めることだ。
アサインメントは単に仕事を割り振ったり、担当を替えるだけではなく、明確な目的や目標が付随する業務とされ、ある程度、負荷のかかる仕事であることが求められる。部下にラクな仕事ばかりを与えていると、仕事は作業になり、部下はいつまで経っても成長しない。
そうかといって難度が高すぎる仕事は挫折を招き本人と組織、双方にとって得るものはない。上司の支援を得ながら何とかこなせる程度の負荷の仕事を与えることが適切な「機会の付与」と言える。エドウィン・ロックとゲイリー・レイサムは「目標設定理論」において、設定された目標が具体的で困難なものであり、出来るか出来ないかのギリギリの仕事がモチベーションを高揚させると唱えている。
〇当事務所の業務案内
モチベーション測定 ・・・ 8つのモチベーションの要因について、理想と現実を測定します。理想と現実のギャップが大きいとモチベーションは低下します。
具体的な進め方
アサインメントの手っ取り早い進め方は、上位階層の社員の仕事から比較的難度の低いものを選び、下位階層の社員にやらせてみる。仮に新人、中堅、ベテランという3階層の社員がいれば、中堅社員の仕事の中から、難度が低い仕事を新人に任せてみる。そして中堅社員にはベテラン社員の仕事から難度が低い仕事を降ろしていく。こうして上から下へ数珠つなぎのように仕事を移していく。
こうしていくと上位階層になるほど仕事が手薄になる。その時は経営陣が乗り出して、上位階層者に対して組織の抱える問題の解決につながるような課題を見つけ出させ、仕事を創り出すように仕向ける。上位階層者には自らの役割や職責を踏まえつつ、現在の会社が抱える問題を解決するにはどうすればよいかを考える仕事を与える。
松下幸之助氏は、この人なら60%ぐらい大丈夫だろうと思ったら適任者に据えて仕事を任せていった。そして人を育てるということは、どんな小さな仕事でも経営者的な感覚をもって取り組む人を育てることであると語っている。だから、あれこれと命令するのではなく、思い切って仕事を任せ、自らの責任と権限において自主性をもった仕事ができるようにしていった。
部下が育たないとお悩みなら、アサインメントがなされているか振り返ってみてはどうだろう。
2024/07/28
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