高業績者たちの共通点
職業人生が長くなるに伴い、古くなったスキルに替わって新しいスキルを身に付ける リスキリング が注目されている。だがリスキリングで習得するスキルはテクニックやコツといった、どちらかと言えば外見的・表層的なものが多い。
パソコンで言えばソフトに相当するものと言え、OSに当たる仕事を遂行する上での基礎、土台に相当する意識や態度、気構えまでは変えられない。スポーツ選手に例えれば、リスキリングで最新の技を身に付けても、基礎体力が劣っていれば、せっかく手に入れた技も活かせない。
パソコンのOSに相当するスキルは汎用的と言え、どの部門、会社、業界でも通用する。ハイパフォーマーと称される高い成果を挙げる人たちの行動上の特徴は
コンピテンシー (competency)と呼ばれる。
このコンピテンシーを習得する上で必要不可欠なスキルがどのようなものかわかれば、自らの能力を向上させるだけでなく、社員教育や採用に応用することで人材の質の向上を図ることができる。
結果を重視する姿勢
大規模な現役社員の調査から判明したのは、高い基礎能力を有する人たちに共通しているのは結果を重視する姿勢だ。人事評価では結果だけでなく、プロセスを重視する傾向もあるが、ハイパフォーマーの多くは結果を最大限重視する。プロスポーツ選手がどれだけ練習をしたかより、結果を重視するのに似ている。
結果を最大限重視する姿勢からは、①当面の達成すべき目標が定まるだけでなく、②自分の目指す将来像、ビジョン、③仕事を進める上での基本的な方針が明らかになる。これによって仕事は上司や会社から与えられる「他人事」から、「自分事」に転じる。つまり当事者意識が生まれる。
そして仕事をする上での自分なりの基本軸が定まり、周囲に影響されることなく、自発的・自律的に仕事を進めるようになる。

自社の高業績者の特徴がわかる「個人特性分析」
失敗した時は内省とフィードバック
そして結果を重視する姿勢で仕事に取り組んでいると、上手く行かなかった時が大きなチャンスになる。失敗することで改善のための機会を得られるからだ。上手く行かなかった時は、積極的に振り返り=内省(リフレクション)をして、周囲の人たちからフィードバックを得るようにする。
事あるごとに内省してフィードバックを得ることを繰り返していると、やがて自分の弱点や至らぬ点、不足しているスキルなどが見えて来る。こうなるとその後は、自分の弱みを補強したり、他者の協力を得ることを躊躇しなくなる。
また内省とフィードバックを多く得ることで、上手く行く時の自分なりの「勝ちパターン」が身につく。つまり再現性を高めることができる。相撲や柔道で自分の得意な組手に持ち込むことが勝つための前提になるのと似ている。
同時に上手く行かなかった時も、その背後にある構造的な要因や類似のプロセスもわかり、同じような失敗を避けることができるようになる。「あっ、これはマズイ兆候だ!」とミスのサインを嗅ぎ取れるようになる。その結果、成功や失敗を幸運や不運といった偶然、まぐれにしなくなる。
数多くの失敗が次の成功の確率を高めるため、ミスすることを極端に恐れない。そのため、極度に綿密な計画作りに時間を費やすのではなく、ある程度の計画を立て、素早く実行してみて、前に進みながら計画を修正していく。つまりマネジメントの
PDCA (Plan-Do-Check-Action)が素早く回る。

変えるのは意識より行動
結果を重視する姿勢に転じるには、高い達成欲求の人が有利になる。だが、そうした人は少数派で、大半の人は結果や目標を目指すことに対してストレスを感じ、挑戦することにためらいを覚える。
達成を重視する姿勢を養う方法としては、意識や考え方を変えるのではなく、行動を変える方が効果が期待できる。人間の学習には頭を使った学びと、身体を使った学びがある。マイケル・ポランニー(Michael
Polanyi)が唱えた「暗黙知」の一つに「身体知」がある。
技術的なスキルは座学のような頭を使った学習でも効果が見込めるが、人間の本質や根源に関わるようなスキルは身体を通じた学習でないと難しい。単に研修やセミナーを受けただけでは、なかなか行動変容にまでは至らない。
マイケル・ポランニー著・「暗黙知の次元」

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2025/12/24
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