人事労務管理と人材マネジメントに関する情報発信

ワークエンゲージメント向上のカギは「ジョブ・クラフティング」



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初対面の外国人から、「今どんなお仕事されているんですか?」と尋ねられたら、多くの日本人、とりわけ大企業に勤めている人ほど、「〇〇という会社に勤めています」と答えるだろう。一方、同じ質問を外国人にすれば、エンジニアですとか、ウェブデザインの仕事をやってます、といったように具体的な職業や職種を口にする。

何気ない違いだが、この相違が労働生産性の違いに関わっている。日本人にとって仕事の前提には会社があり、そこで何をするかは会社が決めるという関係にある。だから今の仕事は?、と聞かれると会社名を答える。これに対し外国人は、最初に自分は何を仕事にするかが前提にあって、その仕事をするために会社員の時もあれば、自営業者のこともある。

日本の会社員にとって仕事は会社から与えられるもの、時には押し付けられるものであり、やらされ感が生じやすい。また定期的に人事異動があり、今の部署に何年いるかわからないから、スキルを高めるための自己投資には関心が薄く、労働生産性が上がらない。

一方、外国人にとって仕事は「マイジョブ」であり、自分事であるから仕事に愛着が湧き、スキルアップによって、よりレベル高い仕事に関わり、収入のアップにもつながりやすい。そのため自己投資には前向きで、その結果、労働生産性が高くなる。




日本の「ワークエンゲージメント」の課題


日本と諸外国のこうした相違は「エンゲージメント」にも影響を与えている。「エンゲージメント」とは、結びつく状態、関わり度合いという意味で、日本人は「従業員としてのエンゲージメント」、つまり会社への貢献意欲やメンバーとしての帰属意識は強いものの、「ワークエンゲージメント」という仕事への活力、熱意、没頭感が希薄だ。

日本の労働生産性を高めるには、この「ワークエンゲージメント」を向上させる取り組みが欠かせない。そのために会社ができるのが「ジョブ・クラフティング」(Job Crafting)と呼ばれる行動だ。craftは技能・技巧・手作業という意味であることから、自分の価値観や興味に応じて仕事を定義し直したり、仕事のやり方を再設計して、新しい仕事の創造に繋げる試みだ。

ジョブ・クラフティングとワークエンゲージメントの関係は、以下のような「仕事の要求度―資源モデル」(JD-R、Job/Demand-Resource)によって説明されている。


令和元年・労働白書 第Ⅱ部 第3章 第2節 P192より



ジョブ・クラフティングの3つの手法


上記に示した「仕事の要求度―資源モデル」の左上の「仕事の資源」とは、自らが携わる仕事を取り巻く環境であり、その下の「個人の資源」(心理的資本)は、社員個人が仕事に向き合う際の心理的な要素と考えればよいだろう。この2つに関わるのが中央に置かれた「仕事の要求度」であり、これは仕事が求めるレベル感と捉えることができる。

この「資源」と「要求度」の関係を自己調整するのがジョブ・クラフティングに当たる。調整の方法には①仕事の数や質、範囲、②人間関係、③仕事の持つ意味付けの3つがある。

①仕事の数や質、範囲:現在の仕事に別の視点を加えたり、逆に不要な箇所を削減する

②人間関係:上司や部下、社内や取引先の人々との関係を見直す。一例を挙げると、得意先を自社製品やサービスを買ってくれる相手として見るだけでなく、自社の製品サービスを改善するチームにもメンバーとして参加してもらう

③仕事の持つ意味付け:これは「教会のレンガ職人」というイソップの寓話がわかりやすい。教会の建設現場でレンガ積みをしている労働者に「何をしているのですか」と尋ねた時、最初の人はレンガ積みという重労働と答え、次の人はカネを稼ぐために働いていると答えた。最後の一人は「多くの人が祈りを捧げる歴史に残る大聖堂を作っている」と答えた。外見上は3人とも同じ仕事をしているが、仕事の持つ意味、位置づけは大きく違う。




ジョブ・クラフティングを成功させる上司のマネジメント


ジョブ・クラフティングを実践するには上司の関わりも必要だ。部下の中でも、これまで仕事は言われた事を、言われた通りにするのが当たり前と受け止めてきたような人に、いきなりジョブ・クラフティングを求めるのはハードルが高い。

そこで上司は部下が一通りのことができる段階に達したら、意識的にジョブ・クラフティングを促すマネジメントに切り替える。たとえば、次のように告げる。「これまであなたがやってきた仕事のやり方は教えられてきたことでしたが、これからは今より生産性が上がるように、自分の発案で仕事のプロセスを変えたり、あなたにとって納得感が得られるように仕事の中身を見直していってください」

そしてジョブ・クラフティングの進み具合を人事評価や目標管理の対象にする。もちろん丸投げは厳禁で、定期的なフィードバックや1on1によるサポート、部下の進捗レベルに応じて負荷を増やしたり、減らしたりするスキャフォールディング(scaffolding=建設現場の足場の組立、以下のイラスト参照)も欠かせない。



上司もジョブ・クラフティングによって生み出される新しい仕事のスタイルを部下と一緒に生み出していく、そんなマネジメント・クラフティングが求められている。


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