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経営者や管理職、人事担当者なら誰でも、社員のやる気を高めたいと願っています。そのためには正しい情報を基に、モチベーションの全体像を理解しておく必要があります。

このページでは時代の流れに沿って、モチベーション研究の成果をご紹介し、それぞれの説や理論を経営や人事、マネジメントにどのように応用すればよいかをご提案しています。



目次


第1章  今なぜ、モチベーションが注目されるのか

モチベーションに取り組む会社の事例


第2章  モチベーションの基礎 (古典派説)

マズローの欲求階層説

ハーズバークの動機づけ衛生理論

古典派の説を経営に活かす


第3章  現代のモチベーション理論

期待理論

職務設計理論

目標設定理論

まとめ




第1章 今なぜ、モチベーションが注目されるのか


モチベーションとは、人が一定の方向や目標に向かって行動し、それを維持する働きです。「動機づけ」「やりがい」と呼ばれることもあります。

モチベーションのうち、仕事に関するものが、ワークモチベーションです。現在、多くの企業で社員のワークモチベーション、「働きがい」を高めることが注目されています。それはなぜなのでしょう。


@会社を取り巻く環境の変化

企業を取り巻く経営環境や競争条件の変化が早く、現場での臨機応変な行動や、迅速な意思決定が求められています。逐一、上司や本社の判断を仰いで動くという受け身の姿勢では対応に遅れが生じ、機会を喪失し、ライバルに出遅れるリスクが高まっています。

また、これらの変化の多くは誰も経験したことがない非・連続的な延長線上に生じています。そのため、過去の知識や経験は役に立たず、現場での社員の創意工夫が重要になっています。

こうした状況に対応するには、社員の仕事への積極的な関与(=いわゆるコミットメント)や、自発的・自律的な判断・行動が求められます。そのためにはモチベーションが高くないといけません。


A高まる付加価値の重要性

競争の質が変化し、顧客は製品やサービスに対して付加価値という一種のソフトやソリューションを求める傾向にあります。製品に占める製造原価の割合、サービスに占める労働コストのウェイトは低下を続けていますし、今後も下がり続けるでしょう。

そのため、顧客価値の最大化に応えるような付加価値を提供できるかどうかが、企業の収益や成長を左右するようになってきました。

この付加価値を生み出すのは、社員の意欲や能力にかかっています。 社員が積極的な意識で仕事と向き合い、前向きな姿勢で能力を発揮するには、強い動機づけによるモチベーションの向上が欠かせません。


B経済的報酬の限界

デフレと低経済成長の下、年々増え続ける社会保障費の増加は企業経営にとって大きな負担になっています。利益に応じて課税される法人税と違い、社会保険料は人件費に応じた負担のため、利益が減っても変わることはありません。経営の先行きも不透明さを増しており、企業は報酬の引き上げには慎重にならざるを得ません。

一方、従業員の側も大幅な昇給が期待できず、社会保険料の負担増により手取りの賃金総額は減少しています。ときおり “給料が安いから社員にやる気がない” と思い込んでいる経営者や人事担当者の方がおられます。しかし、多少給料を上げたぐらいではモチベーションは向上せず、仮に向上してもその効果は一時的で、長続きしないことがわかっています。

大幅な昇給を継続的に実施することが現実的でない以上、おカネに頼らない方法でモチベーションを向上させることが求められています。


C物質的報酬より心理的報酬

終身雇用制度は事実上終わりを迎え、長期安定雇用は保障されなくなりました。また、かつてのような高い経済成長はできず、役職ポストは不足しています。この結果、社員の会社への忠誠心は失われています。

そして、年功序列賃金制度も見直しが相次ぎ、物心両面における安定感・安心感も揺らいでいます。成果が評価され年収が増えても、それはあくまで一時的なものになっています。誰もが、いつ自分が負け組みになるかもしれない、そんな不安を抱いています。

こうした状況で、評価制度と賃金制度の見直しだけによる成果主義的な人事制度は上手く機能しないことが明らかになってきました。お金やポストが報酬として機能しないからです。

企業には、会社と社員それぞれの目標を高いレベルで一致させ、それらの整合性を図っていくことが求められています。経営目標の達成を通じて、社員一人ひとりの人生目標やキャリア、自己実現に対処することが問われているのです。その答えは、社員のモチベーションを向上させることにより、働き甲斐や生き甲斐を高めることにあります。


D求められる成長実感

終身雇用制度の崩壊や非正規社員の増加により、企業と社員の関係はかつての家族主義的な一心同体の関係から、権利と義務による「契約」という関係に変わりつつあります。

契約による雇用・労使関係では、プロのスポーツ選手のように所属組織への愛着や一体感は希薄になります。契約関係にある社員が求めるのは、会社は自分の活躍する場を提供してくれるのか、きちんと成果を評価してくれるのか、ここで腕を磨けるのか、といったことです。

また、義務を果たした以上、権利として主張すべきものは主張するという考えになり、金銭的報酬のアップに対しては感謝よりも、当然の権利としての認識が強く出ます。

こうした契約的な雇用・労使関係を背景に、若い社員ほど将来を見越して、今の会社でどれだけ成長できるのか、この仕事でどんなスキルや能力を身に付け、将来のキャリアにつなげられるのかに関心が向いています。

彼らは終身雇用が保障されない中で、成長もできず、キャリアを積めないまま、年齢を重ねることに危機感を抱いています。入社後3年で退職する者が35%に至るのは、こうした状況が背景にあります。

かつての終身雇用や年功序列賃金に代わり、新しい人事管理の方針、方向性が必要になっています。その一つがモチベーションを向上させる仕組みやマネジメントです。


【関連】 モチベーションに取り組む会社の事例はこちら




第2章 モチベーションの基礎 (古典派説)


マズローの欲求階層説

「動機づけ」「やる気」と呼ばれることもあるモチベーションは、2つの要因から生じます。

ひとつは、「動因」(ドライブ)とよばれ、人の内部・心にあり、行動を引き起こします。身近な動因には、食欲や睡眠といった生理的欲求があります。これらの生理的欲求は1次的欲求ともよばれ、人間には誰しも備わっています。

この1次的欲求が満たされると、次に社会的な欲求と言える2次的欲求が生じてきます。これについては、マズロー(Abraham Maslow)の 欲求階層説 (hierarchy of needs)がよく知られています。


maslow model


この図のように、マズローは欲求の内容をピラミッドのように配置し、下位の欲求が満たされると上位の欲求が生じるとしました。そして、下位の欲求が満たされない限り、上位の欲求が生じることはない、と主張しています。

太古の時代、マズローの「安全の欲求」は外敵から身を守りたいという欲求であり、「所属の欲求」は共同体で生活を営みたい欲求と考えることができます。また現在の企業にあてはめると「安全の欲求」は雇用の保障であり、「所属の欲求」は同僚・仲間との一体感・連帯感と考えることができます。


モチベーションを構成するもう一つの要因は「誘因」(インセンティブ)です。これは人の外部にあり、これより人の行動は誘発されます。ショッピングにおける衝動買いは、ディスプレイが誘因になり、「欲しい」という動因が引きこされた結果といえます。

動因と誘因は相互に影響しあって人間の行動を左右しています。強い動因があれば、誘因がなくても行動が引き起こされます。

逆にいくら誘因があっても、動因が生じなければ行動は起こりません。お腹がいっぱいのライオンは目の前にシマウマがいても、動こうとしません。衝動買いのように、誘因によって動因が喚起され、行動に移る例もあります。



ハーズバークの動機づけ衛生理論

外部から報酬を与えて、モチベーションを刺激しようとする手法は 外発的動機づけ と呼ばれています。目標を達成すれば報償を与える表彰制度や、成績次第で昇進・昇格させる人事制度、成果主義に基づく賃金制度などは、この外発的動機づけの代表例です。

これに対して社員が自らの意思で主体的に目標を立て、目的に向かって行動を起こさせる動機づけは 内発的動機づけ と呼ばれています。

外発的動機づけは、「誘因」によって行動を起こさせるものであり、内発的動機づけは「動因」により、モチベーションを高めようとするものです。

ハーズバーグ (Frederick Herzberg)は、企業におけるこの動因と誘因を具体的に研究し、動機づけ衛生理論 (Motivator Hygiene Theory)として発表しています。この理論はモチベーションを考える上できわめて重要な考えとなっています。


ハーズバークは、さまざまな企業・職種の従業員から、仕事中に極度の満足・不満を覚えたとき、どのようなことが起きたかについて質問し、そこから共通する要因を抽出しました。すると、満足を招いた要因としては 、次のようなものが81%と多数を占め、これを 動機づけ要因 と名づけました。

  • 達成感
  • 他者からの承認・評価
  • 仕事そのものへの満足感
  • 責任
  • 昇進
  • 進歩
  • 個人的な成長


逆に不満を招いた要因は、以下のようなものが69%と多数を占め、これを 衛生要因 としました。

  • 企業の施策と管理
  • 監督
  • 監督者との関係
  • 労働条件
  • 給与
  • 身分
  • 保障


herrzberg_graph1

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この調査から「衛生要因」は不満の原因にはなりますが、これを改善しても満足度は上がらないことがわかります。『不満を解消すること=満足度の向上』ではないのです。

つまり、仕事への不満を生み出す要因をいくら改善してもモチベーションは向上しません。「従業員満足度調査」や「モラルサーベイ」を実施して社員の不満の原因を見つけ、これを解消することでモチベーションを向上させようとしても、そこには限界があります。

「衛生」とは馴染みのない用語ですが、不衛生にすると病気になりやすい(=満足度が低下する)。しかし、いくら衛生的にしても健康になるわけではない(=満足度はアップしない)、と考えるとわかりやすいでしょう。

ここで衛生要因として「給与」「身分」が入っていることが注目されます。賃金制度や昇進・昇格制度は、設計上の不備や運用が上手くできないことで不満をもたらします。しかし制度や運用を改善しても、不満は減るかもしれませんが、モチベーションは向上しません。

賃金制度や昇進・昇格制度のカギを握る人事評価を適切に実施しないと、動機づけ要因のひとつ「他者からの承認・評価」が損なわれ、モチベーションは大きく低下します。衛生要因への配慮はほどほどにして、動機づけ要因を高めることがモチベーションアップには効果的なのです。


なお、ハーズバーグ教授の論文は、以下の本で読むことが出来ます。旧版(左)と新版(右)、どちらも論文の内容は同じです。冒頭の数ページは無料で読むことができます。
動機づける力の本の表紙 新版・動機づける力の本の表紙
 動機づける力  新版・動機づける力



マズローはモチベーションの源泉は人間の欲求という心理・心の内面にあることを指摘し、ハーズバーグはモチベーションには仕事の種類や内容といった外部環境が深く関わっていることを明らかにしました。

マズローやハーズバークの説は1940年代〜1960年代にかけてのものであり、モチベーションの理論としては古典派に位置づけられます。古典派の説に対しては、その後、検証のため各種の実地調査が行われましたが、理論を裏づける結果は得られませんでした。そのため批判の声もあります。

しかし、彼らの説はモチベーションを考える上での基本的枠組みを明らかにした点で大きな功績があり、今なお世界中で引用され、現代のモチベーション理論の形成に大きな影響を与えています。



古典派の説を経営に活かす

マズローやハーズバーグの説からわかることは、会社が社員のモチベーションを向上させるには、内発的動機づけによる手法が望ましいということです

賃金制度や昇進・昇格制度は、ある程度の合理的・客観的基準を満たすことは必要です。しかし、それ以上いくらこれらの制度設計や運用を見直しても、不満は減るかもしれませんが、モチベーションが高まることはありません。

それよりも内発的動機を喚起し、動機づけ要因に訴えかける以下のようなマネジメントが望ましいのです。

  • 目標の達成感を味あわせる
  • やればできるという自信を持たせる
  • 成功には賞賛の声をかける
  • 期待する役割を示し、部署やチームにとって必要な存在であることを理解させる
  • 仲間からの感謝の気持ちを伝える
  • 成功を分かち合う
  • 権限を委譲し、挑戦させてみる
  • 細かな指示や命令は控え、自主的・自発的な判断や行動を尊重する
  • フィードバックを通じて客観的に自分自身を知らしめる
  • トップや上司が夢を語る
  • 提案や意見には真剣に耳を傾ける



古典派説の功績を受け、モチベーションの研究は次のステージへ進みます。次章の「現代のモチベーション理論」では、モチベーションが発生するメカニズムを明らかにすることで、モチベーションに影響を与えている要因に迫ろうとしています。

現在のモチベーションの調査研究の多くは、企業がスポンサーになって行われ、研究成果はスポンサー企業の現場で活かされてきました。今、私たちは、この結果をタダで使えるわけですから、利用しない手はありません。



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【関連ページ】雑誌に連載された記事 ワークモチベーションの着眼点





第3章 現代のモチベーション理論


マズローやハーズバークの研究成果を基に、現在は人間の認知や職務の詳しい分析を通じて、モチベーションが生じるメカニズムを体系的に明らかにするいくつかの理論が打ち出されています。

こうした最新のモチベーション理論は、いずれも統計的手法に基づいて実地調査が行われ、得られたデ−タの分析・検定結果を前提に学説が展開されており、検証に十分耐えうる内容になっています。


期待理論

最初にモチベーションの仕組みを明らかにしたのは ブルーム (Victor Vroom)で、彼の説は 期待理論 (Expectancy theory)とよばれています。ブルームはモチベーションを引き起こす「誘因」として、次の3つの要素を取り上げました。
  1. 本人から見た対象物の魅力度
  2. 対象物を手に入れるための行動が、どのくらい目的達成に直結しているか、その度合
  3. 行動により対象物を手に入れることができる可能性

これらを掛け合わせたものが高いほど、モチベーションが高まるとされています。

期待理論のモデルを示した図


期待理論のわかりやすい例として、大相撲を取り上げてみましょう。仮に現在大関の地位にあり、横綱を目指している力士がいたとします。この力士にとって、「1」にあたるのが横綱の地位という魅力度です。

そして横綱に昇進するための条件はただ一つ、2場所連続で優勝することです。これが「2」に当たります。対象物を入に入れる事と目標が明確にリンクしていて、ほかに選択肢はありません。ビジネスでは、このように対象物を得る(例えば目標を達成する)ための方法が唯一これだけしかないとういうケースは稀で、いくつかの選択肢があるのが普通です。

そして「3」は、この力士自身が考える2場所連続優勝の可能性、確率です 。

ブルームの期待理論の最大の特徴は、モチベーションには対象物の魅力度や自分が思い描く可能性といった人間の認知が深く関わっていることを示した点です。これにより、モチベーションを考える際には個人差を考慮する必要があること明らかになりました。


期待理論を経営に活かす

ブルームの説を実際の仕事の場面にあてはめると、モチベーションを高めるためには次のような手法が考えられます。

まず、目標、結果の魅力度を高めることです。一般的に目標には次のようなものがあります。
  1. 昇進、昇格による地位の向上
  2. 昇給や賞与といった報酬に関係するもの
  3. 目標管理制度で設定する個人の目標
  4. 部・課、チームなど集団での目標

これらは企業・組織から見た目標です。そのため、個人にとっては必ずしも魅力があるとは限りません。そこで、視点を広げ、会社の目標と個人の目標を高いレベルで一致させるようにします。

具体的には、経営理念の浸透、経営計画の周知、事業計画の進捗状況の公開、自分自身と自らが属する部門が果たす役割の理解促進などの会社側の目標に加え、今の仕事をする意味は何か、この会社で働く目的とは何か、自らの成長のために何が必要なのか、これらの社員目線による目標を理解させることで、企業の目標が本人にとっても価値のあるものになるよう仕向けます。会社と個人の目標が高いレベルで一致すればするほど、目標・結果の魅力度が高まります。


次に「2」(行動が目標達成に直結する度合)に対応した方法としては、次のようなものが考えられます。
  1. 目標が明確であること
  2. 目標達成へのプロセスが明瞭なこと
  3. 選択される手段、アプローチに誤りがないこと
  4. それらが効果的、合理的であること
  5. 結果が客観的にフィードバックされること
  6. 必要に応じて支援が得られること

ここでの目標や成果には、企業・組織の目標・成果だけではなく、個人のものも含まれます。

実務的には、人事評価制度や目標管理制度が整備され機能していること、戦略が戦術に落とし込まれていること、キャリアの開発ができる仕組みが整っていること、などが挙げられます。


「3」の可能性を高める方法としては、以下のようなものがあります。
  1. 成功体験を積ませ、自信を持たせる
  2. 周囲の人たちから成功談を得る
  3. 競争力のある製品・サービスの提供
  4. 顧客満足度の向上
  5. マネジメントやマーケティングの強化
  6. OJT、OFF-JTによる人材育成、能力開発
  7. 状況の変化に対応した方針の見直し

「3」は日々のビジネスに近いテーマが多く、これを忘れる経営者や管理職はいません。しかし、モチベーションを高めるためには「1」と「2」への視線と、個人への配慮(個人差)が欠かせません。

「1」「2」「3」の要因はいずれも一つではなく、複数存在し、それらは日々刻々変化しています。そうした状況において、要因の組み合わせの巧拙がモチベーションの高低を決めることになります。



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【ご案内】モチベーションの個人差はモチベーション測定を行うことで、明らかになります。




職務設計理論

ブルームの期待理論は、仕事の中身や内容がモチベーションにどのように作用するのかという点について、十分な考察がなされているとは言えませんでした。

そこで、ハックマン (Richard Hackman)とオルダム (Greg Oldham)は、職務の特性を詳しく取り上げた 職務設計理論 (Job Characteristics Model)を導き出します。

まず、職務設計理論では職務の特性として次の5つを取り上げます。
  1. 技能の多様性
  2. 職務の完結性
  3. 職務の重要性
  4. 自律性
  5. フィードバック

次に、これら5つによって@有意義感 A責任感 B結果についての理解、という重要な心理状態が生じ、それが仕事上の成果であるモチベーションに繋がります。

こうした一連のプロセスに達成・学習・進歩といった個人の成長欲求の強さが深く関わります。成長欲求の強い社員ほど、高い有意義感を得て、強い責任感を感じ、結果についての理解が進み、高いモチベーションを得ることになります。

期待理論と同様に職務設計理論においても、職務の特性についての認知や重要な心理状態、個人の成長欲求といった個人的な要因が関わっており、そのためモチベーションには個人差が生じることになります。

以下に職務設計理論のモデルを示します。

hackman&oldman model



職務設計理論の最大の功績は、職務の具体的な内容とその受け止め方(=認知)がモチベーションに作用している仕組みを明らかにした点です。

これにより経営者や人事担当者は従業員のモチベーションを向上させるためには、何をどのようにすればよいかという対策の基本的な指針を得ることができます。具体的には、モデルの図の左端に並ぶ @ 〜 D について改善や促進を図ればよいことになります。

以下ではモデルの解説しながら、職務設計理論を経営・人事管理に活用する方法を見ていきます。


職務設計理論を活用したモチベーション対策

@社員の技能の多様性を高める
技能の多様性とは、多様な職務を遂行できるスキルやノウハウを身に付けていることであり、教育や研修により知識や資格を得たり、職務拡大(水平方向への職務拡大)や職務充実(垂直方向への職務拡大)によって経験を積むことで、習得することができます。

技能の多様性を高める具体的な施策には次のようなものがあります。
  1. OJTの計画的推進
  2. OFF−JTの充実
  3. 定期的なジョブローテーションの実施
  4. 製造業における多能工化の推進
  5. 複数の製品・サービスを扱えるようにする社員教育・人材の育成
  6. 専門職制度の活用によるスキルの深堀り

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A職務の完結性を高める
職務の完結性とは、仕事全体の中で社員が自分一人でどのくらいその職務を完成・完結させられるかということです。

例えば製造業では、一人で製品を完成させるような「セル生産方式」「一人屋台」は完結性が高く、流れ作業の細分化された一工程だけを担う「ライン生産方式」は完結性が低いことになります。一般消費者相手の不動産仲介業や保険代理店の営業職は職務の完結性が高く、外食チェーン店の接客業務や大型量販店の販売担当といった職種は完結性が低いといえます。

職能別の組織から事業部制へ移行させることや、プロジェクトチームの活用は職務の完結性を高めることにつながります。


B職務の重要性を認識させる
数ある職務の中で、「自分は重要な職務を担っている」という認識を持たせるようにします。この認識は、企業の収益の要となるライン部門や重点投資が行われる部署に属する社員ほど高くなる傾向がありますが、個人の認知や認識によっても大きな違いが生じます。

企業のどの職務や部門にもそれぞれの機能・役割があります。その事を経営陣や管理職が従業員に理解させることが、重要性の認識を高めることにつながります。

具体的には以下のような試みが考えられます。
  1. 経営理念・社是の理解や浸透を図る
  2. 経営計画・経営情報を積極的に公開する
  3. 事業計画立案への参画を促す
  4. 重点課題に対して個人の果たす役割へ期待を表明する
  5. 業務改善のための提案を募集する
  6. 部門の目標の重要性についての理解を促進する
  7. 表彰制度の拡充とその積極的活用を図る


これら@ABのレベルが高ければ高いほど、つまり技能に多様性があり、職務の完結性が高く、重要な仕事に就いていると認識している社員ほど、高い有意義感を得ることになります。


C自律性を高める
一般的に定型的な業務は自律性が低く、非定型的な職務は自律性が高くなります。しかし、職種を問わず、自律性の高い社員は職務の遂行に際し、自主的な判断により、自発的な行動を取っています。また、必要に応じて、同僚や部下、他部署や取引先といった周囲の関係者も巻き込みながら、職務を遂行するスタイルを創り出しています。

こうした自律性を高めるためには次のような試みが必要です。
  1. 権限委譲を進め、一定の権限を付与する
  2. 役割を拡大し、裁量の余地を広げる
  3. 自ら手を挙げ挑戦するという「事実」を人事評価で高く評価する (結果の評価のは二の次)
  4. 自己申告制度や社内公募制・FA制によって希望する部署へ異動できる仕組みを取り入れる
  5. 許容範囲内で業務マニュアルをスリム化させ、マニュアルへの依存度を下げる
  6. 日頃から問題の発見に努めることや、課題を設定すること、暗黙の前提条件を見直すことを意識させる
  7. 細かい指示を出し、逐一報告を求める「マイクロ・マネジメント」を止め、あなたは「何を、どうしたいか」を問いかけるコーチング型のマネジメントへの転換を図る

こうして高まった自律性が責任感の実感につながります。


Dフィードバックの活性化・充実化
フィードバックは仕事に対する結果や評価を伝える有形・無形の情報です。上司からの評価や支援、得意先・取引先から得られる感謝や叱責、といった人間の手を介する無形のものと、何らかのシステムにより自らの生産性、貢献度などが確認できる有形のものがあります。

フィードバックという結果や評価を得ることより、社員は何らかの「気づき」を得ることができ、思考や行動の修正を図り、能力開発への促進力を得ることになります。

【関連するページ】 人事評価のフィードバックを伝える際のポイント



目標を指し示す2人の女性社員の写真
モチベーションを高めるには、対策の組み合わせが重要です



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目標設定理論

目標設定理論は、目標に対する認識とモチベーションとの関係を明らかにしています。この理論が誕生するきっかけは社会心理学の研究成果でした。

社会心理学者のバンデューラ (Albert Bandura)は「社会的認知理論」を発表し (1977年)、この中で 自己効力感 (self-efficacy)の高い・低いが業績に強い影響を与えることを明らかにしました。自己効力感とは、自分は所定の環境の中で所定の行動を成し遂げることができる、という確信や信念のことです。

バンデューラによれば自己効力感の高い人は困難な状況であっても、あきらめずに努力を継続することができ、その結果、高い業績を挙げることができます。逆に自己効力感が低いと、物事を簡単にあきらめてしまい、低い業績しか挙げられません。

この自己効力感をモチベーションの仕組みに取り入れたのが、ロック (Edwin Locke)と レイサム (Gary Latham)で、彼らは 目標設定理論 (Goal Setting Theory)を打ち出します。目標設定理論は自己効力感と業績との関係から、モチベーションの仕組みを明らかにしています。

目標設定理論では、最初に設定された目標が具体的で困難なものであれば、高い自己効力感により行動が継続するという努力が生じ、成果につながるとします。そして、得られた高い業績がフィードバック・評価され、報酬(金銭に限りません)を受け取ることがモチベーションを向上させ、より一層高い目標設定につながり、このモデルのサイクルが循環します。


goat setting


目標設定理論は、高いモチベーションが業績を向上させるのではなく、目標を達成し、それが評価され報酬を得ることが満足感を生み、モチベーションを向上させることを明らかにしました。そして、この向上したモチベーションによって自己効力感が高まり、さらに高い目標が設定されることになります。

だたし、このサイクルが有効に機能するためには、次の2つの条件を満たす必要があります。


条件1 自己効力感に応じた目標の設定

高い自己効力感を得るには、目標を達成するのに必要な知識や能力、スキルが備わっていることが前提になります。そのため目標は社員が潜在的な可能性を最大限発揮して達成できる水準に設定することが必要です。実現できないような高すぎる目標を与えると、自己効力感が低下し、満足するような結果は得られません。

ロックとレイサムの研究調査によれば、高い自己効力感を持てない場合は、目標を数値目標のような業績目標にするのではなく、数値目標を達成するために必要な「学習目標」にすることが有効であるとしています(上の図のA)。学習目標を達成することが業績目標を達成するための正しい手順を発見・習得につながり、それらを活かして実行することにより、自己効力感が向上します。

自己効力感の高・低により目標の水準に違いが生じる原因は、目標達成のために実行される戦略の違いにあります。自己効力感が高い社員は、目標を達成するために必要な能力、スキルが備わっているため、戦略を計画的に見直し、有効な対策を打つことができます。しかし、自己効力感が低い社員は、能力やスキルが乏しいため、目標を達成するために必要な戦略変更ができず、無駄で非効率な行動を繰り返すことになります。


条件2 目標を自分のものとすること

目標設定理論のサイクルが循環するには、設定される目標にコミットメント(=打ち込み度・関わり感)があることも条件とされます。目標を自分のものとして受け入れることが必要なのです。そのためには、@設定された目標が達成できるという期待感を抱かせること、そして A目標がその人にとって重要であると理解、認識させることが必要です。

条件1と2を満たす方策は次のセクション「目標設定理論を経営に活かす」の中で検討します。



目標設定理論を経営に活かす

@目標を設定すること
最初にすべきことは目標を設定することです。この目標は社員一人ひとりの自己効力感に応じた具体的で困難なものであることが必要です。設定された目標た高すぎて自己効力感が低いと判断された場合は、目標を見直し「学習目標」に変更します。自己効力感は常に一定しているわけではありませんので、経営者や管理職は必要に応じて目標を見直すことが大切です。

参考までに自己効力感の高低を調べるチェックリストをご紹介します。リストの中にいくつ該当項目があるかで自己効力感のレベルを判定します。
  1. 難しい目標でも自分で解決できる自信を持っている
  2. 目標を達成するに必要な専門性に自信がある
  3. 仕事を進める際は自分の意思を尊重している
  4. これまで仕事をする上で多くの困難を乗り切ってきたという自負がある
  5. 仕事上の決断は最終的には自分で行っている
  6. 職務を遂行する際、自分の意見を上手に主張する
  7. リーダーシップが発揮できる
  8. 周囲から仕事ができると思われている
  9. 上司や部下、プロジェクトメンバーなどに自分の意見や考え方をはっきり伝える
  10. 仕事に対して自分なりのやり方を持っている

該当する設問の数が40歳未満の場合は、4〜6が普通レベル、40歳以上の場合は、6〜8が普通のレベルです。普通レベル以下の場合は自己効力感が低いと判断できます。

当事務所では社員の自己効力感を測定できる 個人特定分析 を行っています(結果サンプル


目標設定の方法については、強制的に割り当てるやり方と、自らが設定に関わる参加型があります。実地調査を行うと必ず参加型の方が業績が優っているという結果になります。このため目標管理制度では、部下に自主的に目標を設定させるように教えられます。

しかし、ロックとレイサムが詳しく調査すると、参加型による目標設定は強制型よりも困難な目標を設定する事例が多く、そのため結果として参加型による目標設定が業績の向上につながっていることがわかりました。目標設定の方法は強制型でも参加型でも業績に大きな違いは生じません。大切なのは目標の困難度の方です。


A目標に対するコミットメントを向上させること
社員や部下の目標に対するコミットメント(=打ち込み度・関わり感)を向上させるには、次の2つの方法があります。まず、社員や部下に設定された目標が「達成できる」という期待感を抱かせることです。そのための具体的策には次のようなものがあります。
  1. 必要な能力、スキルを身につけさせる
  2. 必要に応じて支援や資源(予算、権限、情報など)が提供されることを約束する
  3. 組織内で情報が共有・交換される
  4. 戦略、手法、プロセスが明示される
  5. 権限委譲がなされ、自主性が保障される
  6. 適時必要なフィードバックが得られる

次に、目標が社員や部下にとって重要な存在として位置づけられることです。そのための施策としては次のようなものが考えられます。
  1. 目標とそれを達成することが成長や職業上のキャリアに重要であることを理解させ、納得させる
  2. 目標の達成と報酬(金銭報酬に限らない)が連動している
  3. 目標達成により得られる報酬(金銭報酬に限らない)があらかじめ明示されている
  4. 目標を達成することへの期待感を示す
  5. 組織内での役割を明確にして、その重要性や貢献度を理解させる
  6. 目標を達成することが “あなたらしさ” が活かせることに繋がることを得心させる




まとめ


モチベーション理論として古典派の説から最新の理論までをご紹介してきましたが、どれが正解なのかという答えはありません。一つの理論で人間のモチベーションを完全に説明するような統一的な理論は未だに確立されていません。

会社がこうした説や理論を活かすには、自社の状況に応じて、使えそうなものを選んで対策を取るようにするとよいでしょう。「現代のモチベーション理論」は実地調査による裏付けが取れていますので、社内を説得するには効果が期待できます。

現代のモチベーション理論はいずれも、人の認知や自己効力感といった心の内面がモチベーションに深く関わっていることを明らかにしました。21世紀に入ってからは、モチベーションにはパーソナリティが重要な役割を果たしていることを示す研究成果が相次いで発表され、注目を集めています。

こうしたことから、モチベーションを向上させる有効な方法は、個人や会社によって異なることがわかります。モチベーションを向上させるには制度や仕組みの導入することによる一律の対策だけでなく、会社や社員ごとに個別の対応が必要です


当事務所では、社員のモチベーションの理想と現状を数値化する モチベーション測定 を行っています。モチベーションを船にたとえると、現在、船が進んでいる方角と本来の進むべき進路を明らかにし、船が理想の目的地へ着くことを目指します。
モチベーション測定の結果サンプル(PDF)

そして、モチベーションの要因ごとにその強さを測定し、意欲・やる気の構造を明らかにする 個人特性分析 も行っています。こちらはモチベーションという船のエンジンの特徴を明らかにします。エンジンの特徴がわかれば、船を全速力で航海させることができます。個人特性分析の結果サンプル(PDF)


人材の診断・分析を使って、会社・組織の競争力強化、生産性向上に取り組まれてみてはいかがでしょう。

E-mail: justeye367@yahoo.co.jp   電話 : 06-6761-3517




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