情意評価
能力評価
業績評価
コンピテンシー評価
社員の勤怠状況、業務への取り組み姿勢、やる気などを査定します 。代表的な評価要素としては、次のようなものがあります。
- 規律性
- 積極性
- 協調性
- 改善努力
- 自己管理
- チャレンジ意欲
- 責任性
情意評価は新入社員や若手社員の評価に積極的に活用されます。社会人として仕事を遂行していく上での必要最低限のマナーやルール、仕事への取り組み姿勢を評価の対象としているからです。
上位の等級に昇格するにつれ情意評価の評価のウェートは低下します。社会人としての職務経験を数十年も積みながら、「規律性」などが問題になるような社員はありえないし、あってはならないという考え方です。
一般的には職能資格制度と併せて運用され、社員の有する知識・熟練度、能力などを査定します。以下のような職務を遂行していく上で必要な能力(=職能)が評価要素として取り上げられます。
- 判断力
- 指導力
- 折衝力
- 知識
- 企画力
- 理解力
- 計画性
- チームワーク
これらの項目の一つ一つについて、具体的にはどういった内容なのかという定義づけが行われる必要があります。なぜなら、自社にとっての「○○力」とは、どういったことを指すのかについて、評価する側・される側の双方が共通の理解・認識を持つことが必要だからです。共通の理解や認識が形成されていないと、評価要素の解釈を巡って上司と部下の間にズレが生じ、評価に対して納得性が得られなくなります。
こうした定義がされていない場合、人事評価は実施しているものの、表面的な実施にとどまり、人事評価本来の目的が達成されない状態に陥ります。
以下はある会社の人事評価表です。この会社では評価要素の定義や意味について、何も定められていませんでした。
項目 |
評価要素 |
自己評価 |
1次評価 |
2次評価 |
成績 |
仕事の量 |
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仕事の質 |
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創意工夫 |
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目標の達成 |
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指導・育成 |
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【成績総合】 |
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態度 |
規律性 |
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責任性 |
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協調性 |
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積極性 |
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勤務態度 |
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【情意総合】 |
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能力 |
知識 |
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判断力 |
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企画力 |
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折衝力 |
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指導力 |
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【能力総合】 |
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【総合判定】 |
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S:極めて高い水準 A:期待水準を上回っている B:期待水準に達している
C:期待水準以下 D:極めて劣っている
こうした会社の人事評価は上位者の主観・印象による結果になり、評価される側の不満が高まったり、ほとんど全員がBの普通評価となってしまう恐れがあります。
欠かせないメンテナンス
能力評価の要素としてどういった項目を選択するかというメンテナンスだけでなく、項目の定義もメンテナンスする必要があります。人事評価は会社の経営に役立てることを目的に行うものですから、経営環境や経営戦略、事業計画の変化に応じて評価項目の意味や内容を更新しなければ、会社にとって意味のある能力評価にはなりません。
またメンテナンスを怠ると、やがて社員からは「上司は何もわかっていない」「会社は現場の実態を知らない」といった発言が聞かれるようになります。これは現場の実態からかけ離れた能力評価が行われている結果といえます。こうした状況ではいくら時間と労力をかけて人事評価をしても社員のモチベーションは上がりません。
能力評価の問題点
能力評価の特徴は社員の持つ能力を潜在能力まで含めて評価することにあります。能力は保有していれば評価され、実際に能力が発揮されたかどうかまでは問われません。
そして経験を積むごとに能力は高まり、一度身に付けた能力は衰えることはないという前提の基に制度設計がなされています。この経験を積むことが、年齢を重ねることと同じ扱いになり、多くの企業で能力評価が年功による評価となり、本来は能力主義であるはずの人事制度が年功序列的な制度と化しています。この点が能力評価の問題点の一つです。
環境変化の早い時代に能力・スキルは急速に陳腐化します。例えば、かつて営業担当者は自社の製品やサービスを顧客に購入させることが能力とされていました。しかし現在は顧客の問題を解決する提案力(ソリューション)が求められています。かつての営業スタイルしか経験のない社員や、これまでの営業手法を改めようとしない社員が経験を積んだからと言って、能力が向上したと評価するのは実態に合わなくなっています。
問題の原因とは
このように経営環境や競争関係が変化すると伴に、求められる能力の質も変化し、能力の低下もありえるのですが、能力評価の設計の前提はそのようになっていません。
その原因は、能力評価が中心的な役割を果たす職能資格制度が賃金と密接に連動するようになっているためです。仮に能力が低下したとすれば資格等級は降格になり、賃金の減額となってしまいます。そのため能力が低下したという評価を下しにくいのです。
また潜在能力を評価するため、評価する人間の主観、印象、推定が入り込む余地が大きいといえます。評価者には人を見極める「眼力」が要求されることになります。ところが企業は長年に渡るリストラで、こうした眼力を持ったベテラン管理職を大量に整理してきました。
このように能力評価は、ますますその機能を果たしづらくなってきています。そのため能力評価のウェートを下げ、代わりに目に見える行動や発揮された行動を評価する
コンピテンシー評価 を採用・導入する企業が増えています。
仕事の質と量、与えられた仕事の成果、課題・目標の達成度を基に査定するものです。多くは目標管理制度とともに運用され、目標に対しての達成度、前年対比率、利益伸び率、経費削減率など、数字によって評価が行われます。業績評価は成果主義的な人事制度制度では大きなウェートを占めることになります。
管理職階層以上は能力評価、情意評価を用いず、業績評価だけで人事評価を行う会社もあります。管理職は潜在能力や仕事への取り組み姿勢を評価するのではなく、任された部門の業績だけを評価の対象とします。結果がすべてであり、どれだけ企業に貢献したのか、それが評価のすべてとする考え方です。
数字で測れない仕事
業績評価は数字を基に評価を行うため、目標が数字で示される仕事には導入しやすいといえます。営業職や生産職など具体的な数字で善し悪しを判断できる職種です。
しかし、仕事の「質」が問われる職種については運用が困難になります。経営や販売の企画、調査分析、研究開発、保守・品質管理、マーケティング、デザイナー ・・・ こういった職種での成果を数字で評価することはできません。
一方、顧客は数字で評価できない仕事によって生み出される新しい価値や、ユニークな提案、斬新な切り口、他社にないアイデアなどに対して、より高い評価を与えるようになってきています。
さらなる混乱
本来数字で評価できない職務に、無理矢理、業績評価を導入している企業もあります。 実態にそぐわない数字で人事評価を行うと、現場は白けてしまいます。こうした弊害を解消しようとして、結果だけで業績評価をするのではなく、途中経過も評価の対象としようとするプロセス評価の動きもあります。
しかし、結果が伴っていなくても、業績評価においてプラスの評価をすると、能力評価との違いが曖昧となり、業績評価本来の趣旨から外れることになります。これを避けるため、今度はプロセス評価と能力評価の違いを明確にしようとする、こうした混乱が目標管理制度への不信を招き、人事制度全般に対する評判を落としています。
結果として、業績評価の最大の狙いである正当な評価で社員の貢献に応える、という目的は達成できない事態となっています。
コンピテンシーとは、高い業績や成果を上げた人に共通する感性や、安定的に発揮されている行動特性のことをいいます。アメリカ政府機関の調査研究から、業績と学歴や知能との関係性は薄く、業績の高い人達には共通した行動上の特徴、コンピテンシーがあることが明らかになりました。
それならば企業においても、高い業績を上げる人達の行動を分析し、共通する特性を明らかにし、これを人事評価に応用しようとする動きが1990年頃から始まります。
その数年後、日本では不動産バブルが崩壊し、多くの企業は成果主義な人事制度の導入に踏み切るのですが、従来の職能資格制度は廃止せず、両制度を併存させることにしました。職能資格制度では社員の潜在的な能力を評価するため、客観性に欠けるという問題がつきまといます。「部下が保有していると思われる○○性という能力のレベルは?」と言われても、客観的な評価ができないのです。
そんなとき、アメリカからコンピテンシーという考えがやって来ました。企業は職能資格制度における評価制度を補うものとしてこれを取り入れ、コンピテンシーによる評価制度が始まります。
具体的には、自社における成績優秀者の行動特性を分析、抽出し、コンピテンシー・ディクショナリーを作成します。人事評価の表現は、職能資格制度における評価である「○○することができる」から、コンピテンシーによる評価の「○○している」と改められます。
これなら、ラインの管理者でも容易に評価が行えるようになる、また採用や配置転換、能力開発の方向を見極めるのにも活用できる、というわけでコンピテンシーによる人事評価は普及し、現在は定着の段階に入りつつあります。
コンピテンシーの注意点
一見素晴らしそうなコンピテンシーですが、弱点もあります。コンピテンシーによる人事評価では、自社における高業績者の行動特性を用いるのですが、中小企業では自社の高業績者のレベルが世の中の高業績者に該当しない場合も多いのです。
こうした場合は、市販されているコンピテンシー・ディクショナリーを買い求め、そこで明らかにされているコンピテンシーの項目について、社内研修で話し合ってみるとよいでしょう。そこには自社の社員には観察されない行動特性が記載されているはずです。
すでに発揮されていると思われる行動特性であっても、現状を超える質的レベル、奥行きの深さについて検討してみると、そこから業務の進め方について新しい視点が開けてきます
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